『アルジャーノンに花束を』


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 『アルジャーノンに花束を』は、アメリカの作家ダニエル・キイスによるSF小説(1966年)です。映画やドラマにもなったそうなので、ご存じの方もいるかもしれません。キイスはもともと心理学を学んだ人で、解離性同一性障害(多重人格)を扱った『24人のビリー・ミリガン』も有名です。

 32歳のチャーリーは知的障害を抱えており、6歳児程度の知能しかありません。しかし、賢くなれば、お母さんを喜ばせられる、みんなとも話ができると考えて、勉強をあきらめません。

 そこで、彼は人工的に知能を回復させる研究の被験体に選ばれ、脳に実験的な手術を受けることになります。手術は成功し、知能指数は普通の人に追いつき、それを追い越して、多くの言語でいくつもの学問分野を渉猟し論文を書くほどになるのです。

 けれども、賢くなるにつれて、自分の過去の経験も理解できるようになります。みんなと楽しく時間を過ごしたと思っていたのは、実は笑いものにされていたのでした。味方だと思っていた人は、彼を利用して売上金をごまかしていたのです。

 治療に携わった教授たちが自分より愚かに見え始め、軋轢が生じて人々が彼から離れていきます。子ども時代に受けた厳しいしつけ、周囲の大人や子どもの侮辱や虐待がよみがえり、トラウマとなってのしかかります。

 賢くなれれば幸せになれると思ったのは間違いでした。それでも、チャーリーは七転八倒しながら、心の傷の一つ一つと向き合い、同じ障害者を救うため研究を続けます。

 表題のアルジャーノンとは、彼に先んじて手術を受けたネズミの名前です。自分の孤独を重ね合わせて共感を抱くのですが、やがてアルジャーノンは異常行動を起こして衰弱していきます。

 チャーリーは自分の行く末を予感し、持てる能力の全てを駆使して、増大した知能の研究に取り組みます。そして徐々に明晰さが失われていく意識のもとで、「この世界にあるなんて知らなかったたくさんのことを見られてよかった」とたどたどしく書き綴るのでした。
あさのは便り::雑感 | 10:31 PM | comments (x) | trackback (x)

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