逆を向く時間


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 クリストファー・ノーラン監督といえば、バットマンシリーズなどのSF作品で有名ですが、彼のマニアックな映画の一つに『TENET テネット』があります。

 この作品には、ある装置を使って人や物が時間を逆行できるという設定が出てきます。

 普通の時間の流れにいる人から見れば、逆行状態の人は未来から過去に向かって生きていく。異なる時間の流れにいる人同士は、互いに相手がビデオの逆再生をしているように見える。

 そういう仕掛けを利用して過去と未来から挟撃して軍事作戦を実行する、というわけのわからないお話なのでした。

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 さて、フィクションはさておき、日常生活でも同じ空間を共有しながら相手と自分とでは流れる時間が違っていると感じる瞬間があります。それは子どもたちと時間を過ごすときですね。

 年を取るにつれて時間が経つのが早く感じられるというあれです。子どもたち、若者たちは驚きと発見に満ちた濃密な時間を過ごしている。

 大人は同じ瞬間にえてして平凡で金太郎飴(これも死語ですが)のような時間を送っています。

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 作家の高樹のぶ子氏は「十歳のときの一年は全人生の十分の一だから結構長い。しかし五十七歳の一年は五十七分の一の分量しかない」と書いています。

 では大人が子どものように一年をじっくり味わうにはどうすればよいか。それは「仮に自分の人生は何歳で終わると決めて眺めることだ」と氏は言うのです。

 子どもの頃は待ち遠しかった誕生日ですが、やがて誕生日ごとに逆向きに余命を数えるようになる。なんだかぞっとしない話ですが、だれにとっても公平な事実には違いありません。

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 赤ちゃんの離乳食には鶏肉のお粥とかバナナヨーグルトとかいろいろメニューがありますが、世の中のおいしいものが何もかも初めてというワクワク感はどれほどのものだろうと想像することがあります。

 スポーツ、勉強、遊び、何であれ時間の無尽蔵を信じ切って熱中できるのも間違いなく若さの特権です。

 若いが故のドキドキは若いうちでしか味わえない。だから全力を尽くして若い時間を何かに費やさないともったいない、ということです。でも若いうちはピンと来ないんですよね、これが…。
あさのは塾便り::本・映画など | 01:06 PM | comments (x) | trackback (x)

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