勇者のプライド


あさのは塾ブログ

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 親しくなった生徒たちも、やがて3月になれば卒業します。講師の大学生、大学院生たちも同じことで、就職が決まれば去っていく。彼らの希望に満ちた出発を見送るのは清清しいし、羨ましくもあります。

 それに比べると、自分の生活の何一つ変化のないことと言ったら。彼らを出迎え見送るのが仕事ですから当たり前の話ですが、毎日が同じことの繰り返し。世の中にはたゆまず努力して創造的に生きる大人たちも多いわけなので、それを考えると気恥ずかしくなります。

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 最近のゲーム事情を知りませんが、昔は人並みにドラゴンクエストなどをやりました。勇者は村にやってくると、あちこちにいる村人に話しかける。

 彼らは情報を教えてくれる。お店の人は武器や防具を売ってくれます。宿屋に行けば主人がそそくさと面倒をみてくれる。道を行き来して同じことしか言わない爺さんもいます。

 そう、自分も昔は勇者の端くれでした。けれども、いつの頃からか村人の側に回るようになった。今の役回りはまさしく宿の主人でしょう。

 うかうかしていると道をうろつく爺さんにさらに格下げになるかもしれない。いかん、これはいかん、と思うわけです。

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 『BU・SU』は1987年公開の日本映画(市川準監督、富田靖子主演)です。この映画は心が「ブス」な女の子が自分を変えていこうという筋立てですが、タイトルの語感の悪さで損をしています。

 さて、映画の冒頭に主人公が上京して新しい高校に転入する場面があって、そのカットが印象的です。

 初めての土地、知らない景色。期待、新鮮さ、心許なさ、違和感、孤独。

 同級生たちが主人公を物珍しげに無遠慮に見つめる視線、視線、視線…。

 映像を見ていると無性に何かが想起されてきます。それはかつてこの世界に生まれ落ちたときに感じたアウェイ感。周りが敵なのか味方なのかもわからず、ただただ緊張して突っ張っていた。

 世界に適応するのもよし。妥協もよし。そして勇者として戦い続ける道もある。誰もがそんな風にして生き方の選択をしてきたことを思い起こすのです。
あさのは塾便り::本・映画など | 02:19 AM | comments (x) | trackback (x)

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