ピグマリオン効果と子どもの将来


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 彫刻師ピュグマリオンは現実の女性に絶望し、生涯結婚はしまいと決心しました。そして、理想の女性を夢見て象牙の像を彫り上げたのですが、見れば見るほどその像の美しさに引き込まれるようになりました。

 そこで、彼は女神アプロディテの社に詣でて、このような女性をお与え下さいと一心に祈ったのです。アプロディテは、熱心な信者であった彼の願いを聞き遂げることにしました。

 彼が家に帰ってみると、彫像の肌は温もりを帯びており、やがておずおずと目を開いたのです。

(ブルフィンチ『伝説の時代』から)


期待が現実を変える

 アメリカのローゼンタールという教育心理学者は、「この子の成績はきっと向上すると教師が期待を込めて指導すると、そうでない場合に比べて、子どもの成績はより向上しやすい」という説を述べました。

 人間は他人の期待に影響され、期待に添うように行動する心理があるというのです。この現象は、上記の神話にちなんで「ピグマリオン効果」と呼ばれています。

 他方、別の学者によれば、「この先生は素晴らしい」と生徒の側が信じているときもまた、学習効果が高くなるのだそうです。これらの説に従えば、先生も生徒も、双方が互いに相手に期待を抱くときこそ、最大の教育効果が発揮されることになります。


夢見る大人たち


 ところで、ピグマリオン効果について語る教育関係者は多く、この言葉には大人の思いを引きつけてやまないものが宿っているようです。そして、それはローゼンタールたちが唱えるところとは、少し趣旨が違っているように思います。

 現実問題として、私たちは、「子どもが劇的に変わることなどそうそうない」ということを、身に染みてわかっています。それでも、大人は子どもの将来を信じて、夢を託さずにはいられません。

 ピグマリオン効果とは、「親や教師が期待をかけ続ければ、子どもはきっと応えてくれるに違いない」という、大人の側の願望を背負っている言葉だと思うのですね。

 願望が常に成就するとは限りません。女神なんていないかもしれない。けれども、願わないわけにはいきません。大人が抱く切実な思いの端々は、必ず子どもの心に刻み込まれています。そう信じましょう。
あさのは塾便り::勉強・子育てなど | 12:22 AM | comments (x) | trackback (0)

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